【発売情報】
本日、モーストリー・クラシック2018年10月号が発売になりました
同時に、Webサイト http://mostly.jp/ も更新。目次、おすすめアーティストなどチラ読みができるほか、バックナンバーのページでは、デジタル書籍も購入できます。ぜひ、サイトにお立ち寄りください


【モーストリー・クラシック10月号の主な内容】

表紙 ベートーヴェン、ピアノ・ソナタ第32番第1楽章の冒頭部分、1817年に贈られた英ブロードウッドのフォルテピアノ

特集 ピアノ・ソナタの魅力

 ベートーヴェン(1770-1826)は32曲のピアノ・ソナタを残した。その創作時期は初期、中期、後期に分けられる。初期には第8番「悲愴」、第12番「葬送」、第14番「月光」、第15番「田園」などがある。中期には第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第23番「熱情」、第24番「テレーゼ」、第26番「告別」などが生まれた。そして後期は、第29番「ハンマークラヴィーア」、最後の第30、31,32番の3つのソナタなどがある。
 音楽学者の平野昭氏は「40年に及んだピアノ・ソナタ創作はベートーヴェンにとって長い冒険の旅であった。すべてのソナタがそうであるというわけではないが、18世紀的なサロン音楽であったピアノ・ソナタを一級の芸術表現にまで高めた。また、ピアノ・ソナタで実験したさまざまな革新的表現をオーケストラ音楽でも試み、最終的には調性音楽として必要十分な条件を備えた弦楽四重奏曲に究極的な姿で収斂させたと言ってよい」と記す。
 ピアニストにとって、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲の録音は大きな挑戦である。マウリツィオ・ポリーニは1975年、第30番、第31番からスタートしたが、最後は2014年。なんと39年かけて完成させた。「コンピューターのように正確、と称された若き時代のポリーニが徐々にヒューマンな色合いを深め、円熟の極致に至る。その演奏の変遷が理解できる入魂作」と音楽評論家の伊熊よし子氏。ほかに、日本で初めてピアノ・ソナタ全曲演奏を行ったケンプ、またシフ、バレンボイム、グード、ブッフビンダーらが全集を作っている。
 特集ではスカルラッティ、クレメンティ、ハイドン、モーツァルト、シューベルト、ショパン、リストら多くの作曲家のピアノ・ソナタを取り上げている。作曲家にとってピアノ・ソナタの作曲は、ソナタ形式を習熟するために必須だった。作曲は習作期を抜けて間もない時期か、後半生の両極に分かれる、と音楽評論家の高久暁氏。それゆえ作品番号は1ケタが多い。作品2はベートーヴェン、ブラームス。作品3はメンデルスゾーン、カルクブレンナー。作品4がショパン、ワーグナーなど。「キャリア最初期にできの良いソナタを作曲、出版すれば作曲能力のデモンストレーションになったし、ピアニストとしての活動を志したのであれば、自作自演のピアノ・ソナタやピアノ協奏曲、室内楽曲を早くに作曲して活動の基盤を固めるのが当然」と高久氏は書いている。
 他に、◎ピアニストから見たモーツァルト「ピアノ・ソナタ」の魅力◎スカルラッティの美を見いだしたホロヴィッツ◎ソナタ形式をめぐって◎ピアノ学習者にとってソナタとは?◎フォルテピアノ弾きたちのピアノ・ソナタ、などです。


特集で紹介したDVD、CDのプレゼントもあります

BIGが語る リッカルド・ムーティ 指揮 (中)
 前回は生い立ちを詳しく語ったリッカルド・ムーティ。今回は指揮者としての心構え、イタリア・オペラのカット問題などを舌鋒鋭く話している。「今日では、多くの若手指揮者は指揮台の上で飛び跳ねたり、演奏会の前でまるでサメのように大きな口を開けたり、泣いて悶えたり…サーカスの公演のようになってきています。音楽表現のためには内面的な肉体のエネルギーが必要なのに、指揮台上で外面的に発散しているかのようです。その力強いエネルギーは内的に爆発させるというのが真の指揮者の表現法です」

宮本文昭の気軽に話そう ゲスト 漆原朝子 ヴァイオリン
 姉の漆原啓子もヴァイオリニスト。父親は船員でクラシック好きだった。ロンドンでバックハウス聴いたこともあったという。啓子が母親のお腹にいるとき、航海に出る父親が「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を母に渡して、これを毎日聴くように、と言ったそうです。母はそれを守って毎日聴いたそうです。それで姉には音楽のセンスが備わったみたいです」というエピソードを話す。しかし、自身のときには「その頃には母はもう胎教でレコードを聴くことに飽きていたみたいです」とのこと。ヴァイオリニストの姉妹はこうして育った。

このほか
◎青島広志の「ブルー・アイランド版音楽辞典」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。

次号予告
2018年9月20日(木)発売の2018年11月号は「センセーショナルな音楽史 スキャンダルを起こした作品」を

お楽しみに~