【発売情報】
本日、モーストリー・クラシック2019年11月号が発売になりました
同時に、Webサイト http://mostly.jp/ も更新。目次、おすすめアーティストなどチラ読みができるほか、バックナンバーのページでは、デジタル書籍も購入できます。ぜひ、サイトにお立ち寄りください


【モーストリー・クラシック11月号の主な内容】

表紙 1803年のベートーヴェン

特集 生誕250年 ベートーヴェン「英雄」出現 前期1770~1804 3号連続
 1770年、ドイツ・ボンに生まれたベートーヴェンは来年、生誕250年の記念年を迎える。モーストリー・クラシックは2019/20年シーズンが始まった9月から3カ月連続でベートーヴェンを特集する。創作時期を3期に分けて今月号は前期(1770~1804)。タイトルの「『英雄』出現!」の「英雄」はもちろん交響曲第3番「英雄」のこと。1803年に作曲され、1804年に初演された。ここまでを前期とした。
 ベートーヴェンは、はじめピアニストとして活動しただけあって、32曲が残されたピアノ・ソナタのうち第22番までが、1804年までに作曲されている。タイトルが付いた有名曲をあげると、第8番「悲愴」、第14番「月光」、第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」が含まれる。「悲愴」は「告別」(第26番)とともにベートーヴェン自身がタイトルを付けた2曲のうちの1つ。音楽評論家の真嶋雄大氏は「ベートーヴェンが表現しようとしたのは、悲壮感そのものではなく、苦悩や絶望などから脱却しようとする強烈な希求である」と指摘する。また「月光」はドイツの音楽評論家で詩人のレルシュタープが「スイスのルツツェルン湖の月夜の波に揺らぐ小舟のよう」と形容したことから名付けられた。この「月光」はベートーヴェンが恋をしたとされる14歳年下の伯爵令嬢、ジュリエッタ・グイチャルディに捧げられた。
 ヴァイオリン・ソナタは10曲のうち第9番までが前期に書かれた。しかも27歳から32歳までの5年間に集中して作曲されている。音楽ジャーナリストの寺西肇氏は「特に音楽史に残る傑作となった第5番《春》や第9番《クロイツェル》をものしたことは、奇跡にも近い。つまり、このジャンルこそが、楽聖の深化ではなく、『天賦の才を持ち併せた証拠』とは、言い過ぎだろうか」と賞賛する。「春」のタイトルの由来は分かっていない。「ロマン派を先取りする甘い楽想と全曲に満ちあふれた陽光、苦悩に満ちたイメージとは全く別の、楽想の魅力を示す佳品」と寺西氏。
 交響曲第3番「英雄」は、ナポレオンについてのエピソードとともに語られることが多い。ベートーヴェンはナポレオンを尊敬していたが、皇帝に即位したというニュースを聞いて激怒、「英雄」と書かれた表紙を破り捨てた、というもの。しかし、これは現在では虚構とされている。原語のイタリア語では「シンフォニア・エロイカ」であり、英語ならヒロイック、「英雄的交響曲」「英雄の交響曲」としたほうが正確である。「ベートーヴェンが示した偉大さとは、神ではない人間の、しかし天に近づこうとした人間の偉大さだった」とドイツ文学の許光俊氏。
 他に、◎ベートーヴェン、その劇的生涯◎「ハイリゲンシュタットの遺書」と真情◎ベートーヴェンが生きた18~19世紀の欧州事情◎ピアノ・ソナタ全集を遺したピアニスト◎ヴァイオリン・ソナタ全集を録音した名手、などです。

特集で紹介したDVD、CDのプレゼントもあります

BIGが語る
第31回高松宮殿下記念世界文化賞受賞 アンネ=ゾフィー・ムター ヴァイオリン
 天才少女から巨匠へと見事に才能を開花させ、世界を代表するヴァイオリニストの1人となったアンネ=ゾフィー・ムター。今年の第31回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したことが発表された。ムターは1963年、ドイツ・ラインフェルデン生まれ。13歳のとき、カラヤンに見いだされ、ベルリン・フィルでデビュー。カラヤン唯一のヴァイオリンのソリストとして活躍した。現在は「ヴァイオリンの女王」と称されるほどの存在感を示す。14歳のときに受けたカラヤンの教え方について話している。
 「カラヤンはスコア(総譜)の前に私を座らせ、何日も何日もスコアの説明をしたのです。オーボエが何をしているのか、フルートが何をしているのか。曲の“鳥瞰図”を理解させようとしたのです」

ペトレンコのベルリン・フィル首席指揮者就任披露演奏会
 WMSベルリン、マンスリー・ベルリン・フィルの2つのコーナーで、キリル・ペトレンコのベルリン・フィル首席指揮者就任披露演奏会を取り上げている。コンサートが行われたのは8月23日。最初にベルクの「ルル」組曲が演奏され、メーンはベートーヴェンの交響曲第9番。ペトレンコは「もし人類を代表する音楽があるならばそれは『第九』です。私とベルリン・フィルの新しい時代のスタートになるべきだと考えました」と「第九」を取り上げた理由を話した。
 ペトレンコはかなり速いテンポでオーケストラを引っ張った。しかし、「決して窮屈な演奏というのではない。常に枠からはみ出そうとするベルリン・フィルの積極性とのせめぎ合いにより、この音楽が持つ表現の激烈さが一層際立った」とリポートされている。

このほか
◎青島広志の新連載「押しもしないが押されてばかり」
◎外山雄三の「オーケストラと暮らして60年」
◎小山実稚恵の「ピアノと私」
◎「鍵盤の血脈 井口基成」中丸美繪
など、おもしろい連載、記事が満載です。

次号予告
2019年10月19日(土)発売の2019年12月号は「ベートーヴェン 傑作の森 中期」を特集します

お楽しみに~